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契約書作成の意味とは?

※本稿はなるべく分かり易く表現する為に法律用語を噛み砕いて記載されております。
そのため、法令上の本来意味と厳密には異なる文言も御座います。予めご了承下さい。


1.契約とは?(契約の意味)
 日本の法律では堅苦しく、契約とは権利義務関係の発生・変更・消滅に関する当事者間の合意と解釈されています。これでは何のことかさっぱり分かりませんが、簡単に言うと契約とは約束事」のことです。このページをご覧の方は誰でも1度は必ずと言って良いほど契約をしています。例えば、お店で食料品などを買ってレジで支払う際に「売買契約」を行っています。
余談ですが、「このページをご覧の方」と限定して記載した理由は、赤ちゃんなど幼児や小学校低学年程度では未だ契約をする能力が無いと判断されるため、少なくともこのページを見て理解できる程度の能力があれば契約ができるという前提で記載いたしました。
さて、この契約、日本の法律では典型例として13種類の契約が記載されています。贈与契約、売買契約、交換契約、消費貸借契約、使用貸借契約、賃貸借契約、雇用契約、請負契約、委任契約、寄託契約、組合契約、終身定期金契約、和解契約の13種類です。
1日に特に意識しなくとも、このどれかの契約を日に複数は行っていることとなります。
先ほどの食料品をお店で買う例では、買う人が商品を手に取ってレジでお金を支払い、レジの店員さんが代金を受け取った時点で売買契約という契約が成立して、完了したこととなります。これは購入者の「買います」という意思と店員さんの「分かりました」という意思(実際は分かりましたと言わなくとも暗黙の了解があったといえます。)が合致したため契約が成立したことを意味します。また、売買契約が成立すると、当然、買う人は商品代金を支払う義務が有りますし、店員さんは商品を買った人に引き渡す義務が有ります。
したがって、契約においては当事者の意思の合致とそれぞれの当事者の義務の履行が重要となるのです。
この例では買う人の「これ買います」という申し込みの意思と売る人の「分かりました」という承諾の意思が合致して、買う人の義務である代金の支払いと売る人の義務である商品の引き渡しが完了して、売買契約が成立して無事終了となるわけです。
※何歳で契約する能力が有るか無いか、契約は債権契約、物権契約、身分契約、商法上の契約、非典型契約などが有るなどの深い問題は有りますが、ここでは省略致します。



2.契約書とは?(契約書の意味)
 例えば、1.で説明した売買契約においては、口約束である「買います」と「はい、良いですよ」という意思の合致で契約は成立するものの、代金の支払いがない限りは契約に基づく義務を履行していないということとなります。したがって、レジでお金を支払わない限りはカゴの中に入っている商品を持ってお店の外に出ることはできないでしょう。結果として、日常生活のほとんどの場面では口約束だけで上手く世の中は回っています。
しかしながら、アパートを借りる時や保険の契約をするとき、会社に就職するときなど重要な局面では契約書が用いられています。契約書とは、契約当事者がどのような合意をしたのかを書面に記載したものです。
なお、示談書や覚書、協定書、借用書などといった名目の書面がありますが、これらの書面も名前は違えど法律上は契約書と同等書面と解釈されます。
さらに、しっかりとしたパソコンで作成、印刷された書面ではなくてもメモ紙に手書きで作成された書面やちぎった紙切れに手書きで記されたものであっても条件が整えば契約書として有効なものと取り扱われます。



3.契約書作成の意義とは?(契約書を作成する意味)
 日常生活では、ほとんどが口約束だけで上手く世の中は回っていますが、2.の後半では重要な局面で契約書が用いられると記載しました。
しかしながら、重要な局面だけではなく、普通に日常生活を過ごしていても往々にして口約束だけだと上手くいかず、ことによっては大変な事態が起こってしまうことがあります。
次の例ではどうでしょうか。

30年来の大親友同士の行政さんと飛田さん、二人が居酒屋で飲み終わり、いつものように割り勘でいざ会計しようと伝票を見たとき、行政さんが給料日前で手持ちのお金が全く無く、飛田さんに
「悪いんだけど給料日前で手持ちが無いんだ。すぐ返すから、ちょっとお金貸してくれないか。」
とお願いしました。
飛田さんも給料日前で厳しい懐具合でしたが、30年来一度もお金の貸し借りもしておらず、たまたま、毎月買っていた宝くじが前日に10万円当たったため、
10万円を貸してあげることにしました。
それから1か月、2か月、半年が経ちましたが、行政さんから一向に貸した10万円の話出てきません。
そこで、飛田さんが
「ところで半年前に貸した10万円で事足りたか。」
と話を切り出しました。
そうすると行政さんが
「えっ、俺10万円なんて借りたっけ。」
と返答しました。
行政さんは酔っていたのかどうか、お金を借りたことすら、すっかり忘れていたのです。

ここで口約束の問題が生じます。
確かに、法律上はお金の貸し借りという契約が成立しました。ただし、これを知っているのは当事者本人同士だけです。誰かその場に証人として立ち会った訳でもなく、何一つお金の貸し借りの証拠が無いのです。
ここに契約書を作成する意義があるといえます。
契約書を作成する重要な意味には大きく3点あります。

@契約内容明確・確認の意味
口約束で上記の契約(これを民法という法律では金銭消費貸借契約と呼んでいます。)の例で行政さんは「すぐ返すから、」と飛田さんに話しました。しかし、この「すぐ返す」という文言、貸した側の飛田さんとしてはすぐなんだから明日とか少なくても給料日の後すぐには返してもらえるだろうと思っているかもしれません。また、借りた側の行政さんは今度の給料日の後、また、飲みに行った際に返すつもりと思っているかもしれません。すなわち、「すぐ」とは明日のことか、給料日の翌日なのか、いつのことか人それぞれで解釈が分かれます。そこで、通常、契約書では当事者の間で何月何日に返すなどと記載することで当事者の間での解釈の違いや相互の思い違いを埋めるという契約内容を明確に確認する重要な意味があるのです。これによって、口約束とは異なって、相互の解釈に違いが無くなるという大きなメリット・効果が生じます。

A紛争回避・予防の意味
契約書を残すことで口約束のような言った・言わない等といった無用な争いや相互の勘違いによる不信感で友情が壊れたりすることが無くなります。なぜなら、契約書という書面にしっかりと書いてあり、当事者の署名押印がなされるのが通常だからです。この署名押印がなされた契約書によって言い逃れは難しくなるでしょうし、ちゃんと二人で確認したことが一目瞭然といえます。また、契約書によっては将来もし、返してもらえなかった場合の制裁の条項を入れるなどによって、いざという際の紛争解決が図られ、迅速に処理されるというメリットがあります。すなわち、契約書に将来想定されるようなリスクを分析して紛争に対して予防的な記載をすることが可能ということです。今回の例では10万円でしたので、「友人同士なんだからわざわざ契約書を作成することはないのでは?」と考えられるかもしれませんが、仮にこれが50万円や100万円だった場合のお金の貸し借りだったらどうでしょうか。こんなお金のやりとりでお金より大切な友情が壊れてしまうことは悲しいことです。もし契約書を作るといって「それじゃ面倒だから君からは借りないよ」と言われたとしても、その後の友情が崩壊する可能性があることを鑑みれば「飛田はちょっと面倒なやつだ」と思われる方が良いかもしれません。余談はさておき、最大の効果は紛争の予防といえます。また、契約書を作成することによって当事者の信頼関係が保全される効果も付属すると思われます。

B証拠保全と間接的な強制の意味
上記の口約束の例では証拠が全くありませんでした。契約書や借用書なり、書面でしっかり残されればこの書面が消失しない限り、お金の貸し借りの証拠が保全されていることとなります。また、この契約書を取り交わすことで、心理的に「お金を10万円借りたんだ」と借りた側は再認識し、「契約書に何月何日に返すと書いたからしっかり返さないといけない」などと間接的にお金を返す強制力が働くことが期待されます。また、貸した側としては契約書を取り交わすことでお金を貸したことの印象が強く残り、書面がある限り、ふとした瞬間に「そういえば行政君に10万円貸したんだっけ」と忘れることを防止する期待が有ります。さらには、万一返済がなされない場合はこの契約書を証拠として民事裁判で争って強制的に返してもらうことができる可能性が極めて高くなります。



4.まとめ・契約書作成にかかる注意点
 以上のように契約書を作成する意義は口約束では賄いきれない局面で大きな役割が期待されており、ここに契約書作成の意味があるといえます。ここで、契約書を作成することが重要なのは判明しましたが、単に契約書を作れば良いということではなく、契約書の内容が非常に重要となります。これは具体的な個々の例で異なりますが、一般的にいつ、どこで、誰と、何を、なぜ(どういう目的で)、どのように、いくらでという7つを意識して考えることが望ましいといえます。なお、契約は自由に当事者の合意を以って成立しますが(契約自由の原則と呼ばれます。)、例えば、「10万円貸すが、1か月ごとの利息として借りた方の顔を1回の利息につき、ビンタ10回」などといった非常識な契約は当然ながら契約書を取り交わしてもそもそも無効となります(公序良俗の原則や信義誠実の原則などと呼ばれます。)。また、重要な局面や後々問題となりそうな場合での契約書は専門家である行政書士や弁護士に相談し、執行認諾付公正証書の契約書とすることも一考の価値があるといえます。